特定技能制度が始まってから数年が経ち、登録支援機関の収益モデルが問われる時代になっています。「支援報酬だけでは採算が取れない」と感じている機関が増え、候補者の減少・価格競争の激化・支援工数の増大が重なり、従来の「契約数を増やせば売上が伸びる」モデルは限界を迎えつつあります。
この状況を打破するために必要なのは、登録支援機関の収益モデルを再設計することです。支援報酬に依存しない新たな収益の柱として、「教育事業」「コンサルティング」「紹介・派遣連携」の3つのモデルが注目されています。本記事では、各モデルの具体的な内容・報酬水準・導入ステップを解説します。
登録支援機関の収益モデルを再考すべき3つの理由
まず、なぜ今の支援報酬依存モデルが苦しくなっているのかを整理します。
候補者減少による契約数の頭打ち
ミャンマー・ベトナムなど主要国からの送り出し数は、渡航制限や教育停止の影響で減少傾向にあります。企業側も「新規採用より定着重視」にシフトしており、新規の支援契約を増やすことが年々難しくなっています。契約件数を増やし続けることで成長してきた従来のモデルは、構造的な限界に直面しています。
支援単価の価格競争
登録支援機関の増加により、「月1万円以下」まで値下げするケースも出てきています。実務負担に見合わない収益構造が常態化しており、単価依存からの脱却は急務です。
支援コストの上昇
通訳・巡回・書類対応などの工数は増え続け、担当者の育成・研修コストも拡大しています。「契約が増えるほど負担も増える」というジレンマに直面している機関は少なくありません。
登録支援機関の収益モデル3選
この状況を打破する鍵は、支援業務を「付加価値サービス」として再定義し、教育・コンサル・連携の3軸で事業化することです。
収益モデル① 教育事業——「定着率=収益率」に変える
採用後の教育・定着支援を有料プログラムとして提供するモデルです。外国人材の即戦力化を目的に、独自カリキュラムを開発・提供します。
具体的なプログラム例としては以下が挙げられます。
- 渡航前の日本語・生活ルール講座(動画・オンライン対応)
- 配属後の職務教育・安全教育
- リーダー層向けステップアップ講座
教育内容を企業ごとにカスタマイズすることで、1社あたり月3万〜10万円の教育支援料を設定できます。企業にとっても「教育に外部ノウハウを活用する」ことは合理的であり、支援と教育をセットで提案することで契約率が高まります。定着率の改善が実績として積み上がれば、口コミ・紹介による新規獲得にもつながります。
導入の難易度としては、教材・カリキュラムの準備が必要ですが、既存の支援ノウハウを体系化するところから始められます。
収益モデル② コンサルティング——受入体制の整備支援をサービス化
「女性人材を受け入れたいが環境が整っていない」「新しい国籍の人材を採用したいが不安がある」といった企業の課題に対して、受入環境整備のコンサルティングを提供するモデルです。
提供内容の例としては以下があります。
- 住居・生活支援の設計(家具・交通・通訳導線など)
- 現場教育マニュアルや作業ルールの見直し
- 就業規則・評価制度の外国人対応
単発契約でも1件5〜20万円の報酬を設定でき、企業の信頼を獲得すれば定期的な顧問契約に発展する可能性があります。高単価かつ継続性が見込めるため、収益モデルとして安定性が高い点が魅力です。
一般的に、外国人材の受入に課題を感じている企業は多く、専門知識を持つ登録支援機関のコンサルティングニーズは高まっているとされています。
収益モデル③ 紹介・派遣連携——候補者供給を収益源にする
自社で紹介業免許を持たずとも、紹介会社・派遣会社とパートナー契約を結ぶことで、紹介・派遣成立時の手数料を受け取る仕組みを構築できます。
仕組みの例は以下の通りです。
- 登録支援機関が「企業側の窓口」として採用要件を整理する
- パートナーの紹介会社・派遣会社が候補者を供給する
- 支援契約と紹介手数料の2本立てで収益を確保する
企業ネットワークを持つ登録支援機関が「候補者供給のハブ」として機能することで、新たな収益源を確保できます。既存の企業との関係を活かせるため、導入のハードルは比較的低く、パートナー企業の選定が鍵になります。
3つの収益モデル比較
| モデル | 収益単価の目安 | 主なターゲット | 導入ハードル |
|---|---|---|---|
| 教育事業 | 月3〜10万円/社 | 製造・介護・ホテル | 教材準備が必要 |
| コンサルティング | 5〜20万円/件 | 新規受入企業 | 提案スキルが必要 |
| 紹介・派遣連携 | 紹介手数料+支援報酬 | 人材需要企業全般 | パートナー構築が必要 |
登録支援機関が収益モデルを導入する実践ステップ
新しい収益モデルを導入する際は、いきなり全モデルを始めるのではなく、以下のステップで段階的に進めることが現実的です。
ステップ1:現状の可視化
支援契約数・単価・担当者のリソースを整理し、現状の収益構造の課題を明確にします。「どこにボトルネックがあるか」を把握することが出発点です。
ステップ2:得意分野の特定
教育・コンサル・紹介連携の3モデルのうち、自社の強みやネットワークに合うものを1つ選びます。すべてを同時に始めるより、1つを先行させて実績を作る方が継続しやすいです。
ステップ3:ターゲット企業の選定
どの業種・規模の企業を対象にするかを決め、アプローチリストを作成します。既存の支援先企業から始めると、信頼関係があるため提案が通りやすい傾向があります。
ステップ4:提案資料・スクリプトの整備
新モデルを提案するための資料とトークスクリプトを準備します。初期は簡易なものでも問題ありません。実際のヒアリングを通じて改善を重ねる前提で動き始めることが重要です。
ステップ5:実施と改善
初期実績をもとに単価・内容を調整し、継続契約化を目指します。うまくいった事例を社内に蓄積することで、次の提案精度が高まります。
登録支援機関の収益モデル拡張まとめ
登録支援機関が支援報酬依存から脱却するための収益モデルとして、教育事業・コンサルティング・紹介連携の3つが有効です。
- 教育事業:定着率改善を付加価値として月次収益を確保
- コンサルティング:受入体制の整備支援で高単価・顧問化を狙う
- 紹介・派遣連携:既存ネットワークを活かして候補者供給のハブになる
「支援するだけ」の存在から、企業の人材戦略を共に設計するパートナーへ。この転換が、これからの登録支援機関に求められる方向性です。
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