セミナーレポート

【アーカイブ動画あり】【属人継承型VS未経験受入型】で組織と営業を設計する|登録支援機関向け

目次

「建設業に外国人は定着しない」「介護業界は離職率が高いから難しい」——。 

採用の現場で繰り返されるこれらの言葉は、一見するともっともらしい分析に聞こえます。しかし、組織開発の視点から見れば、これらは多分に「属性バイアス」に支配された、経営上の思考停止に過ぎません。

同じ業界、同じ国籍、同じ職種であっても、外国人が目覚ましい戦力として躍動する組織がある一方で、早期離職やトラブルの連鎖から抜け出せない組織が存在します。
この成否の分水嶺は、業界の特性や労働者の国籍といった表層的な要素にあるのではありません。
その深層に横たわる「受け入れ構造」の是非こそが、すべての結果を規定しているのです。

 成否を決めるのは「業界」ではなく「構造」である

外国人採用というパズルを解く鍵は、その企業がどのような設計で人を育てようとしているか、すなわち「企業の育成前提構造」にあります。
ここで議論されるべきは、「外国人だから」という特殊解ではなく、「未経験者をプロフェッショナルへ引き上げる再現性のあるシステムが備わっているか」という普遍的な組織課題です。

外国人採用がうまくいくかどうかは、国籍でも、業界でもなく、「企業の育成前提構造」によって大きく左右されます。

「言葉が通じない」「文化が違う」といった摩擦は、適切な構造が欠如している場合にのみ顕在化する症状に過ぎません。
外国人採用を巡る諸問題は、実はその組織が抱える「未経験者育成能力の脆弱さ」が、外国籍という変数によって浮き彫りになった結果なのです。

 2つの構造「属人継承型」と「未経験受け入れ型」

企業の育成構造を峻別すると、以下の2つの対極的なモデルが浮かび上がります。

 

属人継承型:暗黙知に依存する脆弱な基盤

日本の伝統的な現場に根深く残る構造です。ここでは以下の特徴が顕著に見られます。

  • ノウハウがベテランの脳内にのみ存在し、言語化・共有化されていない。
  • 「背中を見て覚えろ」という文化が、指導の放棄を正当化している。
  • マニュアルが欠如、あるいは形骸化しており、拠り所がない。
  • 「できて当然」という空気が支配し、心理的安全性が著しく低い。

この構造に未経験の外国人を投入することは、経営上の大きなリスクです。言語の壁がある中で「空気を読む」ことを強いる環境は、本人を深刻な孤立へと追い込みます。
結果として生じる離職や失踪は、構造が招いた必然的な帰結です。

未経験受け入れ型:再現性を担保するシステム

一方、外国人がスムーズに定着する企業は、「人を選ばない」堅牢な仕組みを持っています。

  • 作業工程が極限まで分解・定義されている。
  • 「教えること」を前提に、業務フローが再設計されている。
  • 誰が確認しても同一の結果が得られるチェックリストがある。
  • 評価基準が言語化され、成長のステップが可視化されている。

こうした構造は、特定技能などの外国人材が持つポテンシャルを最大化させる「器」となります。OJTが属人性を排したシステムとして機能しているため、国籍を問わず安定した戦力化が可能になるのです。

 

 建設業を「職種」で分解して見えてくるもの

「建設は難しい」という粗い言葉を、構造の視点で解体してみましょう。
職種単位で分解することで、これまで見えていなかった可能性の輪郭が明瞭になります。

  • 標準化が可能な領域(未経験受け入れ型との高い親和性) 型枠、鉄筋、内装、配管、電気などは、工程の分解が比較的容易であり、作業の標準化が進めやすい領域です。これらは「仕組み化」によって外国人の早期戦力化が期待できる、前向きな可能性に満ちた領域といえます。

  • 暗黙知が強い領域(属人性が高く言語化が困難な領域) 左官や大工などは、長年の経験に基づく「身体知」への依存度が高く、それを言語化して伝える難易度が極めて高い職種です。こうした領域では「見て覚える」文化が障壁となり、受け入れ側の拒絶反応も強まる傾向にあります。

「建設だから無理」なのではなく、その職種が持つ「身体知の言語化難易度」に応じた構造設計ができているかどうかが、真の論点なのです。

 プロフェッショナルに求められる「解像度」と「リスク」

この構造的視点は、あらゆる業界に共通する生存戦略です。労働力不足が深刻化する日本社会において、いつまでも「職人的な暗黙知」に依存し続けることは、持続可能性を放棄する経営リスクそのものです。

  • 介護:ベテランの勘に頼る属人型か、ICTや業務分解で標準化を徹底する未経験型か。
  • 外食:店長のカリスマに依存する個店か、多店舗展開を支える仕組み化されたチェーンか。

また、人材支援機関や営業職にとっても、この視点は決定的な差別化要因となります。「介護業界は……」といった粒度の粗い説明は、顧客に「自社の実情を理解していない」という不信感を抱かせます。

 真のプロフェッショナルは、工程単位、職種単位で構造を語らねばなりません。

すべての業界にいい顔をするのではなく、特定領域の構造を深く理解し、そこに特化して提案を行う。
この「リスクを取った専門性の尖鋭化」こそが、無形商材における信頼の源泉であり、代替不可能な価値を生むのです。

 視点を「誰を入れるか」から「どこに入れるか」へ

外国人採用を成功に導き、組織の競争力を高めるために、視座を以下の3点へ転換してみてください。

  1. 業種や国籍という「属性」で成否を判断しない
  2. 企業の「受け入れ構造」が属人型かシステム型かを冷徹に見極める
  3. 業界論という逃げ場を捨て、構造レベルの具体的課題を言語化する

外国人採用の成否は、「誰を入れるか」という個人の資質以上に、「どんな構造に入れるか」という組織の設計思想によって決まります。

あなたの組織、あるいはあなたが支援するクライアントは、未経験者をプロへと変える「構造」を持っていますか?
それとも、個人の資質に依存し続ける「経営の空白」を放置していますか?

いま、その構造を問い直すことこそが、次世代の成長に向けた最初の一歩となるはずです。

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