目次
はじめに
日本の深刻な人手不足を背景に、外国人材の受け入れを支える登録支援機関は“1万機関超え”となり、その重要性が一層高まっています。
しかし、機関数が増える一方で、実際に積極的な営業活動を行っているのはごく一部とされ、事業継続が難しいケースも少なくありません。新規参入が続く反面、毎年多くの機関が撤退してしまう状況も見られます。
本稿では、こうした環境の中で登録支援機関が持続的に成長するための営業戦略と、外国人材を「労働力」ではなく「人材」として育てる新しい支援モデルを提案します。
登録支援機関ビジネスの現状と課題
活発な事業展開のための基盤
事業を成功させるためには、まず質の高い人材供給源と繋がることが不可欠です 。安定したパイプラインと、それに付随する信頼できるコミュニティネットワークに接続することで、安心して事業を進めることができます 。
顧客の意思決定を早める「待たない」戦略
登録支援機関ビジネスのボトルネックの一つは、顧客である受け入れ企業が外国人採用の目的を顕在化させ、意思決定に至るまでに時間がかかることです 。
この課題を乗り越えるための営業戦略として、理屈や説明に終始するのではなく、「良い人材を実際に見せる(論より証拠)」ことが効果的です 。具体的なイメージを持たせることで、商談を加速させることができます 。
「潜在層へのアプローチは時間がかかる」という一般的な認識に対し、事業推進のプロの視点からは「待たない」戦略が強調されます 。人材ロスを避けるため、「一日も早くやりましょう」と伝え続けることが重要です。
営業戦略を考える際、特に重要になるのが「顧客が意思決定に至るまでのプロセス」をどう短縮するかという視点です。そこで、顕在層・潜在層それぞれの課題を可視化すると、より適切なアプローチが見えてきます。
顧客層 | アプローチの課題 | 対応策 |
顕在層 (実績あり) | 既存取引先からの「乗り換えコスト」が存在 | 差別化と、自社を通じていかにスムーズに受け入れられるかという道筋作りが必要 |
潜在層 (実績なし) | 説明に時間を要し、「長く待たなきゃいけない」と考えられがち | 「待たない」戦略で、採用を先延ばしにしないよう促す |
営業戦略と並んで、実際の受け入れ現場で起きる“つまずき”をどう解消するかも、事業成功に欠かせない視点です。その典型例として、特に支援の難易度が高いとされる介護分野の論点に触れていきます。
特に介護分野では、「外国人材を育てていけるか」という研修への懸念が強くあります 。
この懸念を払拭し、受け入れを成功に導く鍵は、「最初のひとこぎ」となる初動支援にあります 。具体的には、最初の1~2週間、現地語と日本語が両方できるスタッフが施設に深く入り、OJTでの言葉の行き違いを防ぐなど、集中的なサポートを行います 。これが、その後の受け入れをスムーズにする「いい循環」を生み出します 。
支援の重要性を確認したうえで、次に必要なのは「どこから、どのような人材を確保するのか」という供給源の戦略です。ここからは、実際に成果を上げている地域連携や国別戦略のポイントにご紹介します。
インドネシア支援の実務と成功要因
事業領域と地域連携の可能性
登録支援機関が注力すべき分野として、介護、ビルクリーニング、宿泊、農業、飲食料品製造、外食業が挙げられます 。これらの業界ごとのノウハウや人材の動機付け・適性が重要であり 、専門性の高い供給源を持つことが求められます。
外国人材は都心集中傾向にあるため 、地方では実務ノウハウが不足しがちなため、自治体や金融機関との連携が特に重要となります。
その国の特徴や供給源としての強みを理解すると、支援モデルそのものをどのように設計すべきかが見えてきます。単なる「送り出しと受け入れ」ではなく、人材を育てるという視点が不可欠であり、ここからはその支援モデルをさらに深掘りしていきます。
質の高い支援への転換:「ゼロからプラス」のモデル
事業を持続させる上で、国が定める義務的支援(マイナスからゼロの支援)だけでは限界があります 。義務的支援のみでは、事業がどこかで詰まる可能性があるため 、「日本人以上に活躍していく人材を育てる」という認識に基づいた「ゼロからプラスの支援」への転換が求められます 。
この支援に移行できると、お客様と末永く付き合っていくことができるようになります 。
| 支援のフェーズ | 目的・内容 | ビジネス上の影響 |
マイナスからゼロ | 外国人が日本人と同じように働けるように、不足を埋める(義務的支援) | この部分だけでは事業が詰まる可能性がある |
ゼロからプラス | キャリアを一緒に考え、日本語を「運用力」として伸ばす(付加価値支援) | お客様と末永く付き合っていくことに繋がる |
支援の効率化と「人材育成」という理想
支援の理想形は、受け入れ企業と「人材として育てていく」という視点を共有し、採用段階から“人手”ではなく“将来伸びる人材”を選び、育てていく流れを作ることにあります。この考え方は、企業・本人双方にとって、長く良い関係を築く基盤にもなります。
一方で、義務的支援を徹底的に効率化し、低価格で提供するという方向性もありますが、中途半端な支援は結果的に双方にとって不利益となりやすいため、避けたいところです。
支援モデル(インドネシア人材の持続型支援モデル例)
- 戦略的な取り組み: 日本とインドネシアの社会課題への貢献をミッションとし 、日本の地方とインドネシアの地方が、人材だけでなく、経済交流や観光など多様な交流で結ばれていく流れを推進。
- 教育とマッチング: 現地の日本語学校と連携し、質の高い日本語教育にこだわるとともに 、民族ごとの特徴やパーソナリティ、背景なども踏まえた有機的なマッチングを重視
個別課題への対応と求められる視点
理想的な支援モデルを描く一方で、現場の登録支援機関が日々直面している具体的な悩みにはどう向き合えばよいのか。
事業の戦略論だけでなく、実務や将来的な規制に関する懸念への対応策が重要です。
質の高い継続学習の実現
内定が出ると勉強しないパターンが多いという課題に対し 、介護分野では初任者研修にほぼ等しい内容を現地で教える流れが有効です 。内定後も勉強を続けるためには、単純な「お金稼ぎ」ではない、本人の内発的な動機を掘り下げて日本行きにつなげることが重要です 。
規制強化と企業姿勢
外国人に対する規制強化への懸念がある中で、重要なのは、ただ安い人件費という理由だけでなく、「外国人材を有機的に受け入れ、会社の核となる戦力にする」という視点で、トータル的な話をクライアントと合意することです 。地域にも役立つように発信することで、思わぬつながりが生まれることもあります 。
また、行政書士法の変更により、2026年1月以降、在留資格申請についてより厳格化していく流れがあるため 、個別の状況に応じた適切な対応が必要です 。
「ゼロからプラスの支援」の具体例
ゼロからプラスの支援の具体的な役割は、異国で働く人材のキャリアを伴走支援することにあります。
- 精神的サポート(愚痴の傾聴と激励): 異国で働く彼らの愚痴を聞きながらも、頑張りを促す存在になる 。
- キャリア・目標達成の伴走: 職業能力の向上、日本語運用力の目標、資格試験、ビザのステータスなどを全て含めた目標シートを作り、達成に向けて伴走していく(学習塾のチューターのような存在)
まとめ
登録支援機関ビジネスが抱える課題は、営業力の強化はもちろんのこと、それに加えて人材の質をどう高め、どんな支援モデルを築くかにも左右されます。
今後の競争環境を乗り越え、長く続く事業へと育てていくためには、「待つ営業」から「動く営業」へ、そして「義務的支援」から「価値を生み出す支援」へと踏み出すことが重要です。
成長戦略のポイント
- 人材の質とスピードの重視
潜在顧客には「一日も早く動くこと」の重要性を伝え、良い人材を実際に見せる“証拠ベース”の営業が効果的です。 - 支援モデルの転換
「マイナスをゼロに戻すだけの義務的支援」で終わらせず、キャリア形成や日本語力向上を伴走する「ゼロからプラスを生む支援」へ。これにより、企業との長期的な信頼関係が築かれます。 - 強い供給源との連携
特定の国(例:インドネシア)における人材育成の知見や、現地学校との連携は、安定的な供給と質の両立につながる大きな強みになります。